EAの設定で最も重要なのは、どれだけの資金がかかっているかを決めるものです。つまり、ロット数の計算方法、口座のどれだけをリスクにさらすか、どこまで深いドローダウンを受け入れるかです。これらは、良い結果も悪い結果も含め、すべての結果の大きさを決めます。戦略そのものを良くすることはできず、どのロボットにもどの口座にも合う値はありません。
この記事で扱うのは考え方であり、特定のロボットの話ではありません。名称や選択肢はEAによって異なり、すべてのEAにすべての項目があるわけでもないため、ここではパラメーター名を挙げません。自分のEAで何が使えるかはマニュアルで確認してください。ロットを設定する三つの方法、リスク率が管理できることとできないこと、ドローダウンの数字の読み方、自分の上限からEAのサイズを決める方法、変えないほうがよい設定を解説します。初めての方は、ロットサイズの節から読んでください。EAを動かした経験がある方は、ドローダウンの計算の部分をお読みください。
一部の設定が他より重要な理由
EAの設定は二つのグループに分けて考えましょう。
| グループ | 決めること | 触る人 |
|---|---|---|
| サイズ | 取引ごとにリスクにさらす金額 | 自分:口座と上限次第 |
| 戦略 | EAの売買タイミング | 通常は誰も触らない:開発者の値かプリセットのまま |
理由は単純です。リアル口座の実績は、特定の設定で作られたものです。サイズを変えれば、結果はそれに比例して変わります。戦略の設定を変えれば、それは別のシステムを動かしているのと同じで、その実績はもう当てはまりません。バックテストが良く見えるまでこれらの設定を調整することは、過剰最適化の始まりでもあります。
ロットを設定する三つの方法
ほとんどのEAは、次の方法のうち一つ以上を使います。例では米ドル口座のEUR/USDを使います。この場合、0.10ロットはpipあたり1ドルです。
| 方法 | 仕組み | 弱点 |
|---|---|---|
| 固定ロット | 毎回同じロット | 残高と損切り幅でリスクが変わる |
| 残高比例ロット | 口座とともに増える。例:1,000ドルごとに0.05ロット | 損切り幅でリスクが変わる |
| リスク率 | 残高と損切り幅からロットを計算 | 毎回、損切りの設定が必要 |
固定ロット
わかりやすく、バックテストとの比較も簡単です。しかし、口座残高が動くと、同じ取引でも意味が変わります。20ドルの損失(0.10ロット、損切り幅20 pips)は、2,000ドルの1%、1,000ドルの2%、4,000ドルの0.5%にあたります。ドローダウン中は、固定ロットが残った資金に占める割合が気づかないうちに大きくなります。
残高比例ロット
サイズは口座の増減に合わせて変わりますが、損切り幅は考慮しません。0.10ロットなら、損切り幅10 pipsのリスクは10ドル、40 pipsのリスクは40ドルです。エントリーから損切りまでの距離が取引ごとに大きく変わるなら、リスクも同じように変わります。
リスク率
この方法では、EAは受け入れる損失額から逆算します。使う式はFXの資金管理と同じです。
ロット数 = リスク金額 ÷(損切り幅(pips) × 1ロットのpip価値)
| EUR/USDの損切り幅 | 2,000ドルの1%のロット数 | 損切りに達した場合の損失 |
|---|---|---|
| 10 pips | 0.20ロット | 20ドル |
| 20 pips | 0.10ロット | 20ドル |
| 40 pips | 0.05ロット | 20ドル |
この方法なら計画した損失額は一定に保たれますが、それはEAに式で使える損切りがある場合に限られます。グリッド型やナンピン型のEAのように含み損の取引に追加していくシステムには、単一の損切り幅がなく、取引ごとの割合ではそのリスクを表せません。こうしたEAについては、マニュアルとリアル口座のドローダウンのほうが多くを教えてくれます。
リスク率で管理できないこと
- 複数の取引の同時保有。それぞれ1%の取引を三つ持てばリスクは3%で、相関があればすべてが同時に損切りに達することもあります。複数のFX EAを運用する方法をご覧ください。
- 最小ロット。500ドルの口座では、1%は5ドルです。損切り幅80 pipsなら、式の結果は5ドル ÷(80 × 10ドル)= 0.00625ロットで、一般的な最小値の0.01を下回ります。0.01ロットでは実際のリスクは8ドル、つまり1.6%です(当サイトの計算)。この場合に自分のEAがどう動くか確認してください。取引を見送ることも、計画より大きく建てることもあります。
- 窓開けとスリッページ。損切りは保証ではありません。相場の急変時や週末をまたぐときは、より不利な価格で約定することがあり、損失が設定した割合を超える場合があります。
- コスト。スプレッド、手数料、スワップは、損切りまでの距離とは別にかかります。
手で確認できるサイズを知りたいときは、ロット計算ツールをご利用ください。
取引ごとのリスクがドローダウンになる仕組み
ドローダウンを左右するのはサイズですが、その関係は完全な比例ではありません。次の表は、当サイトの資金管理の記事から引いた、2,000ドルの口座での十連敗の例です。
| 取引ごとのリスク | 10連敗後のドローダウン | 回復に必要な利益 |
|---|---|---|
| 1% | −9.6% | +10.6% |
| 2% | −18.3% | +22.4% |
| 5% | −40.1% | +67.0% |
5%のリスクは1%の五倍ですが、ドローダウンは約4.2倍の深さです。残高に対する割合で決めると、損失のたびに取引が小さくなるからです。固定額の場合はより厳しく、毎回100ドル(当初の2,000ドルの5%)では、同じ十回の取引で50%を失います。固定ロットでは、金額ベースのドローダウンはロットに正比例します。そして、どの行でも回復は下落より険しくなります。
ドローダウンの数字はサイズと一緒に読む
リアル口座の割合は、ロットの裏にどれだけの資金があったかで変わります。同じ損失額でも、見え方は大きく異なります(架空の数字)。
| 入金額 | ドローダウン(金額) | ドローダウン(%) |
|---|---|---|
| 10,000ドル | 3,000ドル | 30% |
| 20,000ドル | 3,000ドル | 15% |
| 30,000ドル | 3,000ドル | 10% |
ですから、ロボットを比較する前に、どの残高でどのロットを取引したのかを確認しましょう。可能であれば、0.01ロットあたりの金額ベースのドローダウンで比較します。ロットが口座とともに増えていた場合は、サイズと残高が自分の計画に近い時期の割合を読みましょう。
自分のドローダウン上限からEAのサイズを決める
例に出てくるロットからではなく、自分が受け入れられる範囲から始めましょう。計算例を示します。数字は架空のもので、実在のロボットを表すものではありません。
- あるリアル口座は0.20ロットで取引し、最大のドローダウンは3,000ドルでした。0.01ロットあたり150ドルです。
- 自分の口座は5,000ドルで、上限は15%、つまり750ドルです。
- 過去のドローダウンの場合:750ドル ÷ 150ドル = 5なので、0.05ロットで上限をすべて使い切ります。
- より深いドローダウンに備えて余裕を持たせ、仮に過去の1.5倍とすると:750ドル ÷(150ドル × 1.5)= 3.3で、切り捨てて0.03ロットです。
- 0.03ロットなら、過去のドローダウンは450ドル(9%)、その1.5倍は675ドル(13.5%)です。
1.5はあくまで例であり、基準ではありません。実績の期間が短ければ、悪い時期を経験した回数も少ないため、より大きな余裕が必要です。この計算が最も合うのは固定ロットです。価格が逆行すると取引を追加するシステムには当てはまらず、その場合ドローダウンはロットより速く増えることがあります。
どこでやめるかを決めておく
始める前に上限を書き出し、そこに達したら何をするかも決めておきましょう。サイズを下げる、EAを一時停止する、EAを外す、のいずれかです。リアル口座の最大ドローダウンは、いつでも更新される可能性があります。連敗の最中に作るルールより、事前に決めたルールのほうが守りやすいものです。ドローダウンの最中に、取り戻そうとしてサイズを上げてはいけません。
レバレッジはリスクを決めないが、証拠金を決める
レバレッジを変えても、pipの価値は変わりません。EUR/USDの0.10ロットは、どのレバレッジでもpipあたり1ドルです。変わるのは必要な証拠金で、価格1.085の場合は次のとおりです。
| レバレッジ | EUR/USD 0.10ロットの証拠金 |
|---|---|
| 1:30 | 361.67ドル |
| 1:100 | 108.50ドル |
| 1:500 | 21.70ドル |
これは、EAが複数の取引を保有したり、ポジションを積み増したりするときに重要になります。Free Margin(余剰証拠金)がなくなると、業者のロスカット(Stop Out)によって、EAが選んだのではない水準で取引が決済されます。自分の業者のロスカット水準を確認し、EAが保有し得る最大の取引数に口座が耐えられることを確かめましょう。詳しくはFXのレバレッジとは?をご覧ください。
調整ではなく確認すべき設定
多くのEAには、次のような設定が何らかの形であります。最適化はせず、自分の環境に合っていることを確認してください。
- 通貨ペアと時間足。EAは、作られた対象のチャートに適用します。EAが別の銘柄にそのまま合うとは限りません。
- 業者ごとの違い。銘柄名、サーバー時間、スプレッドは開発者の環境と異なることがあり、それに合わせた調整が必要なEAもあります。
- スプレッド上限。EAにこの設定がある場合、業者に対して値が厳しすぎると、まったく取引しなくなることがあります。
- 取引時間とニュース時の停止。EAにこれらがある場合、システムの作り方とテスト方法の一部なので、変更する前に確認してください。
- 最大保有取引数。一度にどれだけのリスクが積み重なるかを決めます。
- 損切り。EAがすべての取引に損切りを置くのか、どれくらいの距離に置くのかを把握しましょう。置かないのであれば、上のリスク率の節は当てはまりません。
開発者のプリセットがあれば使いましょう。何かを変更した後は、まずデモ口座でテストしてください。デモ口座でわかるのはEAが期待どおりに動くかどうかであり、将来の結果を証明するものではありません。
リアル運用前のチェックリスト
- マニュアルを読む:このEAはロットをどう設定するか?
- すべての取引で損切りを使うか、同時にいくつの取引を保有できるかを調べる。
- ドローダウンの上限を金額で書き出す。
- 上限からサイズを計算し、端数を切り捨てる。
- 証拠金と業者のロスカット水準を確認する。
- 戦略の設定は開発者の値のままにする。
- 上限に達したら何をするかを決める。
FXロボットのカタログの各ロボットのページでは、リアル口座とドローダウンを確認できます。この計算はそこから始まります。
よくある質問
EAには固定ロットとリスク率のどちらがよいですか?
EAによります。リスク率は計画した損失額を一定に保ちますが、すべての取引で損切りが決まっている必要があります。固定ロットはより単純でバックテストと比較しやすいものの、ドローダウン中は口座に対するリスクの割合が大きくなります。どちらか一方しか使えないEAもあります。
リスク率はいくつに設定すべきですか?
どのEAにも合う単一の値はありません。裁量取引では、取引ごとに1–2%のリスクを取るトレーダーが多く、初心者は1%以下から始めることがよくありますが、複数の取引を同時に保有するEAにはより注意が必要です。一回の取引の数字ではなく、受け入れられる全体のドローダウンから考えましょう。
ロットサイズを下げればドローダウンを減らせますか?
たいていは減らせます。固定ロットなら、ロットを半分にすると金額ベースのドローダウンもおよそ半分になり、利益も半分になります。業者の最小ロットを下回らないようにし、含み損の取引に追加していくシステムは比例どおりに縮小しないことがある点も覚えておきましょう。
EAのエントリー設定は変更すべきですか?
通常は変更しないほうがよいでしょう。リアル口座の実績は開発者の設定で作られたものであり、設定を変えれば、独自の実績がない別のシステムを動かすことになります。バックテストが良く見えるまで過去データで調整するのは過剰最適化です。
EAのドローダウンはどの程度を想定すべきですか?
リアル口座の最大ドローダウンと取引サイズを確認し、将来はそれより悪くなり得ると考えましょう。どの実績も、起こり得ることの限界は示しません。過去より深いドローダウンでも計画の範囲に収まるように、EAのサイズを決めてください。
まとめ
- サイズの設定は自分で選ぶものです。戦略の設定は、通常は触らないのが最善です。
- 固定ロットはサイズを一定に保ち、リスク率は計画した損失額を一定に保ちます。
- 取引ごとのリスクは全体のリスクではありません。保有中の取引、最小ロット、窓開けも考慮しましょう。
- ドローダウンの数字は、その裏にあるロットと残高と一緒に読みましょう。
- 自分の上限から始め、余裕を残し、どこでやめるかを事前に決めましょう。
これから始める方は、まずトレードを始めるためのステップガイドをお読みください。
この記事は学習目的の情報であり、投資助言ではありません。特定のロボットの設定を推奨するものでもありません。過去の結果は将来の結果を予測するものではありません。レバレッジ取引には損失のリスクがあります。